さくらです。
唐突ですが、そういえば、一人で旅をしたことがありませんでした。
山の牧場で生まれ、庭のあるウチダ家に暮らし、
旅好きなこの家族と、海へ山へ森へ、よく遊びにもいきました。
犬というのはふだん、昨日のことも、昔のことも振り返りません。
目を開けて広がるそのときその場所に、いること。
犬の生きかたは、そのことに徹し、また幸せを感じるものなのです。
ただ、あのときはちがいました。
とーさんがいつもは毛が飛ぶからと滅多に入れない家にいれてくれて、
ゴーさんが300キロ離れた松本から予定もなしにやってきて、
うーさんが7500キロ離れたカナダから夢のなかで声をかけてきて、
そして夕方、かーさんが仕事を振り切って帰ってきたあのとき。
このひとたちと過ごした15年間のことを、よくよく思い出しました。
そして思ったのです。
一人旅をしていないな、と。
旅に出てから、今日で、人間がいうところの、2日が経ちました。
一人で旅をしてみると、おもしろいことがわかりました。
一人で花の匂いを嗅ぎ、一人で空を見上げて、一人で餌にありつき、
一人で行き先を決め、一人で道を歩いている、にもかかわらず、
ゴーサンやうーさん、とーさんかーさんが絶えず側にいることを感じるのです。
ウチダ家のみんなが旅を好いていたその気持ち、わかった気がします。
旅って、いいものですね。
また手紙を書きます。
2011年12月7日
さくらより
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12月5日午後6時10分、15年間ともに過ごした我が家の愛犬、
ラブラドールレトリーバーのさくらが、その長い一生に幕を下ろしました。
我が家で直接彼女と話し、遊び、過ごしてくれたみなさん。
このブログを通して、彼女の日々を温かく見守ってくれたみなさん。
ありがとうございました。
彼女の旅が穏やかで愉快なものになるよう、一緒に祈ってもらえたら幸いです。
15年間、本当にありがとう、さくら。
旅先で、会いましょう。
2011年11月7日
ウチダゴウ